ご自身の今まで全く経験していない業務を命じられたらどうしますか? 「今までやったことないから出来ません」「私には無理です、お断りします」と言いたいですよね。少なくとも私はそういう会社員でした。
前回同様、今回も私が実際に会社で命じられた話をさせていただきます。以前にも触れましたが、私は理工系の学校を卒業したのでもともと理科系が専門の人間です。前回の専門外の業務の話はこちらです。
大株主が変わりました
勤務先での出来事
現在も勤務している会社での出来事です。本社はフランスで、100年以上つづく部品メーカーの日本法人です。私が入社した時は、社長がフランス本社から派遣された方が務めていました。
大株主がUSAの会社になった
それまで大株主は、フランスの投資会社だったと記憶しているのですが、その大株主が我社の株をUSAの企業に売却してしまったことで、私たちはそのUSAの会社グループの一員となりました。
こういったケースは外資系企業に勤務していると、たまにあることですから驚きはないのですが、もしそのUSAの会社の日本法人があれば、我々は彼らに買われた身なので、リストラ等にあっていたかもしれません。そういう意味ではラッキーだったと言えます。
聞いたことのない要求
その会社は非常にコンプライアンスが厳しい会社でした。コンプライアンスとは日本語では『法令遵守』となります。特にうるさく要求されたのが、Trade Compliance (トレード・コンプライアンス、輸出貿易における国際的な法律を守って仕事をすること) が異常なレベルで要求されました。
USA目線の輸出貿易規制を我々の輸出業務や海外顧客とのビジネスに従わせる要求です。日本の場合、まだ救いだったのが、日本の輸出規制(武器や武器に利用できる精密製品を敵国に輸出してはいけない)がUSAと内容がほとんど同じだったので(日本はUSAと兄弟国みたいな感じ)、この部分はポジティブな点でした。
但し日本法人から、ひとり責任者を選出する要求がありました。しかし社内にはそのような業務を過去に経験した者は一人もおらず。。。
結局、私が兼任で日本法人のコンプライアンス責任者に任命されました。私は法学を専攻してませんし、貿易業務を担当したこともありませんし、コンプライアンスについてチンプンカンプンです。この業務を引き受けることはとても嫌でしたが引き受けました。以前の『英語編』の時に学んだ「目の前に現れる障害や予期せぬ出来事は成長の機会と理解し、乗り越える努力をすると道が開ける」を思い出したからです。
コンプライアンス
まずは勉強
まずは独学からです。新しい親会社のコンプライアンス部門から、会社規定をいただき片っ端から読みあさりました。親会社が変わる前は、フランス本社にもコンプライアンス部門がありませんでしたので、社内で誰もわからない状態の本当にゼロからのスタートでした。私も生まれてはじめての業務でしたので不安でいっぱいでした。
少し経過したころ、私たちに週一回の勉強会が親会社コンプライアンス部門主催で行われることになりました。3ヵ月ほど続きました。でも、何とか少し意味が分かってくるので不思議です。特別な興味やおもしろさはないし、自分の専門でもありませんでしたが、成長した感じがあり、何だか得をした感じさえありました。会社の指示でやっているのではなくて自分のために、と言い聞かせていました。
社内での社員教育
何とか乗り越えながら、そして日本人社員用にマニュアルをつくりました。そして、次は社員教育です。もともとその様な発想(トレード・コンプライアンス)で仕事をした経験がないので社員全員も大変だったと思いますが、まあそれでも全員協力してくれたと思います。いろいろ苦労はありましたが最終的に軌道に乗ったと思います。
社内監査
年に一度、コンプライアンス社内監査がありました。USAのコンプライアンス部門から日本に派遣され、我々のビジネスプロセスが規定に沿って実施されているかの確認をします。3日間ずっとこれに付き合わなくてはいけなく、内心「こんなことしていくらの利益があるんだ」と思っていました。
そして大株主がまた変わった
大株主が変わると要求事項も変わる
そのUSAの会社が我々の大株主なり5年ほど経ったとき、我々の会社の株を別のUSAの企業に売却することが発表されました。「またかよ!!」「マジかよ!!」しかし次の会社も日本法人がなかったので我々はリストラ等の被害にあいませんでしたが、同じUSAの会社でも、会社が変わると我々への要求事項も変わりました。
今度の新しい大株主は、コンプライアンスにうるさくありません。さすがにUSAの企業ですからコンプライアンス部門はあります。但し、全然うるさくありません(笑) もちろん社内監査もありません(笑) 今までのようなコンプライアンス活動は要求されません(笑)
何だったの?
とんだとばっちりです、コンプライアンス。全ての時間を費やし、あれだけコンプライアンス業務に没頭させられましたが、嵐の後の静けさです。ですが、すごく私自身にとっては為にもなりました。会社員として「やってみて損をすることはない」と今回も思いました。
為になったこと
- 知らなかったこと(コンプライアンス関連)を知れたので知識が増えた。仕事上、知識が増えて損はしない
- 今までと違った部門の方達と知り合いになれた。技術系の人達とタイプが違って勉強になりました。結果、視野は広くなったと自己評価
- アメリカ英語を学べた
- 社内のネットワークが増えた。これは外資系企業で重要です
- 私が日本法人内で労われ、功労者あつかいされた
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