現在は転職と聞いて特に驚かれるようなことはありませんが、以前はネガティブな印象があったのは事実だと思います。終身雇用が前提の会社を自らの判断で退職し、他の会社へ転職する行為はまるで裏切り者を見るような状況だったと思います。但し、もうそれはずいぶんと昔の話です。
今回は転職というものについて、私の会社員経験をふまえ考察してみたいと思います。
日本における転職の歴史
1980年代ころまで
私が大学を卒業した頃の時代は、会社員(新入社員含む)の終身雇用の意識は高く、全員とは言いませんが、少なくとも私は転職を前提とした就職はしていませんでした。しかし結局その後、私自身が勤務していた会社の倒産などで転職をせざるおえなくなりました。
この時代は、まだ転職に対してネガティブな目で見られてしまったのも事実かと思います。
そして私の記憶ではありますが、この時代、会社倒産や懲戒を除き、会社側から社員を辞めさせるようなことはほとんど無かったと思います。
1990年代
ところが1990年代前半のバブル崩壊が引き金となり、一部の日本の大手企業でリストラが開始された記憶です。この頃から転職という言葉のイメージが変わったでしょうか。終身雇用のつもりで入社した会社が従業員を守ってくれないのか、という現実に直面したことになります。
リーマンショック
2008年のリーマンショックの後に、会社員にとっていくつかつらい時期があったと思います。会社員の心の変化、自分で自分を守るという意識はさらに強まったのではないかと考えております。そしてその頃から転職活動自体はもはや当たり前になっていました。
私も転職という行為をポジティブな目線で見るようになりました。その頃、以前に比べれば多くの転職支援企業が誕生し、転職ビジネスとして成り立ち、会社に勤務しながら転職活動をすることが普通にできる世の中になりました。これは会社員目線からすると非常にありがたい状況と感じていました。
会社員本人が幸せにならなければ企業の発展や成長はない
人材
昔から従業員に対し「人材」という表現を使っていますし(ある会社は神材なんて表現しています)、私の会社員人生を通し、今でもこの人材(従業員の質)が会社業績に大きな影響を与えると確信しております。
経営者は本来、従業員の幸せを重要視するべきと思うのですが、その様な経営者がどれだけ存在しているのでしょうか? 考えてみれば大手企業の経営陣も雇われの身であり、ご自身のことで精いっぱいなのかもしれません。もちろん全ての経営陣とは言いません。
しわ寄せ
しわ寄せはいつも会社員(従業員)にいくことにっています。リストラだけではありません。例えば会社が買収され、親会社から新しく上司になる方がやって来られ、事情も何も考慮せずに一方的に不合理な要求を押しつけてくることがあるかもしれません。
また、会社合併などで従来の処遇が悪い方へ変わってしまうケースもあるかと思います。納得がいかないですよね、人材として扱われていないようです。
自分の身は自分で守る
自分の身はどうしたら守れるのかというと、専門的なスキルを身につけることです。勤務している会社以外でも通用する専門的なスキルです。できればそのスキルは他の方より秀でていると尚よしです。このことに集中して会社員をして下さい。
転職のタイミング
転職回数
私自身も数回の転職をしましたが、あまり短期間に転職を繰り返すのは印象が良くありません。例えば5年間に職を3回も変えるようなケースです。応募先の方が、当社に入社しても直ぐに辞めてしまうのではないか、と考えるからです。
会社倒産などでやむを得ず転職の場合もあるかと思いますが、一般的にはある程度の在職期間は必要となります。実際問題、例えば1年間で仕事を通しどの様な専門スキルが身につけられるでしょうか? 誰でも良いから人が欲しい、という会社を除けばほとんどの会社では採用は難しいと思います。
また、私の面接経験で転職理由をうかがったところ、「入社前に伺っていた仕事内容と違った」とか、「雇用条件が違った」などと説明をしてこられた方がいました。しかし、社会人として大人ですから、全て自己責任な訳です。この様な失敗を繰り返す方は、残念ながら実務でも同じような失敗を繰り返すと私は考えております。厳しい言い方になってしまいましたが、ですから転職は安易でなく慎重にするべきです。転職によって輝きを取り戻した人間を何人も見てきました。
ちなみに外資系企業は転職回数が多くても問題ない、なんてコメント見たことがありますが、それウソです。私も外資系企業に35年以上おりますが、転職を繰り返す方を Job Hopper と見られ警戒されます。外国人の同僚もそういった候補者を嫌がります。
会社員としての姿勢
配属された部署で何でもよいですから、その組織の中で何かの分野(スキル)の一番になって下さい。僅差ではダメです。ダントツ一番を目指して下さい。そうなった時に、そのまま会社にとどまり更に上を目指すのか、転職機会を利用してキャリアアップを目指すのか、そういった検討をする価値はあるかと思います。
転職コンサルタントに注意?
この様なことを記述すると、コンサルタントの方達からお𠮟りをいただくことになるかもしれませんが、正直に言わさせていただきます。
彼らも人材紹介のプロのビジネスマンです。転職を成功させると候補者の年収の数十%の報酬を依頼企業からいただくことになります。転職希望者は彼らにとって商品な訳です。彼らと上手くお付き合いをして優良企業を紹介していただくことは良いのですが、最終的な判断は必ずご自身でなさって下さい。内定が出ると何とか転職をさせようと、しつこく迫ってくることがあるかもしれませんが、これに屈してはいけません。
キャリア志向のギャップ
ご自身の将来のキャリア志向と会社が求めてくるものに大きなギャップがある場合は転職を検討しても良いかもしれません。入社数年後に、ご自身のキャリア志向が変わる場合は当然あります。ご自身のスキルを向上する意欲、意識の高い方に見られます。
会社が嫌で仕方がない
とっとと転職して下さい。会社員は1日の多くの時間を会社に拘束されます。その様な場合は転職を検討して問題ありません。病気にでもなって一生を棒に振るようなことになったら大変です。
但し、必ずその理由、原因を把握して下さい。何が嫌なのか、どこに納得が出来ないのかなどです。これを怠ると、最悪次の会社でも同じ過ちを繰り返してしまう場合があります。もう一度言います。嫌なものは嫌です。転職によって解決を試みるのなら、その理由、原因を知って下さい。
最後に
- いつ何時、何があっても、ご自身を守るのはご自身の専門スキルであることを意識してハングリーな会社員生活を過ごして下さい
- 安易な転職で、転職を繰り返すことのないよう、慎重に転職して下さい
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